「生命保険のカラクリ」
そうとう周回遅れながら岩瀬さんの本。業界の風雲児です。
この本は、業界の人間であればもう目次だけで内容が分かる、それほど分かりやすい。だからこそ、業界外にも読んで欲しい。
- 作者: 岩瀬大輔
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/10/17
- メディア: 新書
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【目次】
第一章 生保のGNP − 義理・人情・プレゼント
・ 祖母の思い出
・ 花より団子、外食より保険
・ 人生で二番目に大きな買い物
・ 日本人の生保好きはいつから始まったか
・ 世界一儲かる生保市場
・ 罪深い「転換セールス」
・ 逆ざやが残した禍根
・ 払われなかった保険第二章 煙に巻かれる消費者 − 誤解だらけのセイホ
・ スパゲッティのように複雑
・ 貯金はできないけど保険なら払える
・ かけ捨ては損ではない
・ 「何に備えるか」で整理すると三つしかない
・ 定期、養老、終身の違い − 生命保険の基礎
・ 「保険料はどこでも同じ」ではない
・ 保険に「ボーナス」はない
・ 「途中でやめたら損」とは限らない
・ 医療保険は入ってはいけない?!
・ 民間の生命保険がすべてではない第三章 儲けのカラクリ − 生命保険会社の舞台裏
・ 保険会社をゼロから作ったら
・ あなたが死ぬ確率は?
・ 保険金詐欺との戦い
・ 単品主義のススメ
・ 私たちの保険料、28兆円のフロー
・ 世界最高の投資家は保険屋
・ 生保はリスクを取りすぎか
・ 引きこもりのザ・セイホ
・ シサ、ヒサ、リサ − 保険会社の収益源第四章 かしこい生保の選び方
・ はじまった地殻変動
・ 宿敵、簡保の民営化
・ 銀行窓販の全面解禁
・ 生保が共済に敗れる日
・ 来店型代理店の台頭
・ 保険料の自由化と新規参入の促進
・ 付加保険料開示の衝撃
・ 生保業界の生きる道
・ 保険にかしこく入るための七カ条
(http://totodaisuke.asablo.jp/blog/2009/10/08/4620466より抜粋させてもらいました)
この第四章に「来店型代理店の台頭」とありますが、そこの隅っこに自分がいるわけです。ここでの自分の立ち位置は前回触れたので置いといて。
ちょっと話が逸れますが、東洋経済などのビジネス雑誌で「生保」や「損保」の特集をするとグンと部数が上がると聞いたことがあります。これはなにもみんなが知りたいということだけじゃなく、購読者のかなりの比率で業界関係者が買うからだということです。つまり、それだけ保険業界に従事している人が多いわけなんです。それは保険会社の社員・外交員はもちろんですが、銀行・証券業界に携わる人たちもそう、また大手メーカーの保険部や系列代理店であったり、地域の車ディーラーさんだったり、もちろん僕のような代理店社員もそうです。はてさて、それはすごい数です。保険ってどこにでも存在します。いまやコンビニのレジ横にも資料が置いてあったり。で、実際にそういった特集を組んだときは、だいたい保険会社の社員さんが「読みました?うちはこの分野で○位でしたが・・・」「よくテレビに出てるあのFPがこんなこと言ってますね」なんて言いながら持って来てくれたりします。いつもありがとう。
で、いつも思います。業界外の人たちは本当に読んでいるんだろうか、読んだとしてどう思ってるんだろうかって。でも、大体来店されるお客さんに「読みましたか」なんて聞いてもほとんど読んでいません。そんなもんです。
あの梅田さんの「ウェブ進化論」から始まるシリーズが、梅田さんが描く想定読者(ウェブリテラシの高い人)を超えて(僕なんかのウェブ素人が熱狂して)広く読まれたように、この岩瀬さんの本も業界関係者‘以外’に広く読まれて、初めて岩瀬さん自身の目的も果たせるんじゃないかと思います。広がらなければ結局いつものように業界内で「あの内容は違うぞ」「ここがわかってないよ」なんてあーだこーだと言うことになる訳ですから。そんな内輪の構図に風穴を開けたい、というのがライフネットの使命でしょうから。でも、部数は相当売れているようなので結構いい感じなのではないでしょうか、業界以外の方たちも読まれているのでは、どうなんでしょうか。
ただ、ひとつ思うのは、情報をオープンにしていくことでいい方向に行くから大丈夫だよ、と思える自分の商売の立ち居地と、そこを無造作にやってもらっちゃ困るんだよ、と頭を抱えるひとたちがいて、また実際の話ですが、その矛盾した立ち居地の人間は、実は自分の中にもひっそりといる訳でして。
商売上で「公平に、出来ることなら誠実に」動くという難しさを、今でも時折噛み締めます。それは、物々交換ではない、貨幣経済に魅せられた僕自身の浅ましさでもあると思います。
・・・なんだか勝手にトーンが暗くなってまいりましたが(笑)、「保険ってなんだよ」と思っている方には一つの指標となる分かりやすい良本です。ぜひぜひ。