「ひとり」(吉本隆明)
15歳の子供達の質問に「さあ、どうぞ。もっとお楽に。お行儀悪くなさってください」という言葉で開講された吉本隆明の小さな寺子屋、というテイで作られた小さな小さな本です。90ページもない。
- 作者: 吉本隆明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/10/19
- メディア: 単行本
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引用したい箇所がいくつかあるのですが、ちょっとタイムリーなのでここをメモとして抜粋。大人になるってどういうこと?という問いに対して。
子どもにあることはそのまんま、大人にもあります。
いいこともありますし、悪いこともあります。
僕は子どもの頃に、いじめっ子もいじめられっ子も両方体験したけど、それも学校を出て会社に勤めたとしても同じです。子どものころにあることは、大人になっても、みんな、ある。
それに対して個人個人がどう防御できるかというと、そこで「いじめをなくそう」とか問題を全部取っ払おうとすると、それはまた別の意味の嘘になる。その問題そのものがなくなると思わない方がいい。
問題は歴然としてあるんだけれど、それに対して、誰にもいわないでも、わからないでもいいから、自分はこういうやり方で緩和しているんだという自分なりのやり方を編みだすようにするのが、いちばんいいんじゃないか。
自分はこういうやり方でいじめたり、いじめられたりっていうのを避けているんだとか、やり方はそれぞれに違ってていいと思うので、考えて、考え抜いて、自分で確立できたら、それはもう、立派に「大人になった」といえるんじゃないでしょうか。
ここで間違っちゃいけないのは、これは、いじめを回避する方法論ではなくて、「大人になった」といえる状況とは何だろうかという解の事例の一つであるということですね。