語ってくれる人がいる幸せ
赤めだかを読んだ。
- 作者: 立川談春
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/04/11
- メディア: ハードカバー
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仕事途中の栄養補給に、昼下がりの紀伊国屋で立ち読みで読破してしまった。グラグラとアホみたいに泣きそうになりました。
立川談志という破天荒な人間の落語に惚れ込み17歳で弟子入りし今現在に至るまでの話。ストーリーが面白いのではなく、談志という人間に惚れ込んでいるからこそ語れる部分、談志が言葉を残してこなかった過去の空白の部分、談志とその師匠小さんとの無言の会話、巨大組織の落語協会と談志の想い、そんななんやかんやを談春は丁寧に愛情たっぷりに埋めていきます。本の字面から談志の照れ臭そうな顔が滲み出てくるようでした。そうなんです、談志も談春も心底「やさしい」んです。まさに「業を肯定」しているんです。談志落語です。
本の話とは微妙にズレる読後感ですが、一人の人間についてここまで寄り添い語ってくれる人間が存在し、その人の人生を演奏してくれるように言葉を奏でてくれる(紡いでくれる)ことの幸せってないよなとつくづく感じました。
談志さんのような天才でなくとも、日々せっせと、淡々と生きている人それぞれが、それぞれを語ってくれる人を持てたならば、それは幸せなんだろうなと。自分のことをちょっとでもいいから語ってくれる人間がいることの幸せ、言葉という枝葉って人を語るためにあるのかな、なんて言葉の使い方についてぐるぐる考えさせられました。
そんなことを考えたのも、すごい遅れて平民さんのこの凄まじいエントリーを読んだからかもしれません。
言葉にならない時の言葉を僕はまだ知らない。